オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


「もう少ししたら、食べに行こう」

「京夜様?食べに行くなら、着替えないと」

「だから、そのままでいいって」

「ですが………」


不安を隠しきれず視線を泳がせると。


「ラフな格好の方が、返って目立たないから」

「へ?………そうなんですか?」

「ん」


彼のことを信じてない訳じゃないんだけど。

それでもやっぱり不安で仕方ない。

脳内であれこれ考えてみるものの、敷居の高いお店ばかりが思い浮かぶ。

そんな私に彼は………。


「ん」

「……………はい?」


彼はおもむろに左手を差し出した。

はい、何でしょう?

突然手のひらを見せるように差し出され、ふと記憶が甦る。


これって、デジャヴ?

前にも同じようなことがあったよね?

あの時は、確か………。


「持ってないのか?」


やっぱり。

彼は眉間にしわを寄せ、私の顔色を窺い始めた。


「あります」


バッグの中からハンカチに包まれたアレを取り出す。


「ん」

「……………はい」


これから彼が何をするのか分かるだけに、少しばかり恥ずかしい。

こういうことって、何度経験しても慣れないみたい。


私は俯き加減でソレをそっと彼の手に乗せた。

すると、彼の手がスッと私の左手を取り、元あった場所へと納まった。


ひんやりと冷たく、そして眩いほどに輝くソレは、私の心を一瞬で満たしてくれた。


「ありがとうございます」

「礼を言うのは、俺の方だ」


ゆっくり立ち上がった彼は、長い腕で私を包み込んだ。


「俺のもとに戻ってきてくれて、………ありがとな」


え?

私の気のせい?

何だか、彼の声が震えてる気がするのは………。


彼の顔を窺おうと視線を持ち上げると、きつく抱きしめられた。


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