オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


どうしたのかしら………?


涙腺が緩むのを必死に堪えているのか、京夜様は大きく深呼吸した。

そして、ゆっくりと腕の拘束が解かれると、揺れる瞳に私が映る。


「もう俺を守ろうとするな、………いいな?」


ちょっと低めの声音と共に射竦められては、心臓が反応せずにはいられない。

でも、即座に『はい』とは言えない。

だって、何度同じ状況になったとしても、やはり同じ選択をすると思うから。


無意識に泳ぐ視線。

彼の視線から逃れるように……。


「希和」


いつもなら凄みを利かせた低めの声で威嚇する彼なのに、何故か今日はいつもと違う。

声を震わせ、切実さが滲んでいる。

私は白旗を上げ、顔を持ち上げた。


髪に優しく触れる指先。

愛おしそうに見つめる瞳。

安堵の溜息を零す薄い唇。


そのどれもが私の胸を熱く焦がす。

心配させたい訳じゃない。

彼の重荷になるつもりもない。

ただ彼が、幸せに暮らせたらと………。

けれど、それには『私』が必要なのであれば、これ以上の幸せはない。


頬に添えられた彼の手に手を重ね、微笑する。


「ずっとお傍にいますから」

「当たり前だ」

「ウフフッ…」

「この俺から逃げれると思うな?地獄の果てでも探し出してやる」

「ホントですか?」

「愚問だ」


漸くいつもの彼に戻った。

口角をキュッと上げ、不敵に微笑む姿はいつみても京夜様らしくてホッとする。

そんな彼にギュッと抱きついた。


「京夜様っ、だぁ~~~いすきッ!!」


久しぶりの感触。

細い線なのに、程よく筋肉がついていて。

大柄な私が抱きついても、決して負けない体。

自分が『女性』だと思わせてくれる、唯一の男性(ひと)。

このぬくもりを決して手放したりはしないんだから。


自然と視線が絡み合うと、


「行くぞ」

「……どちらへ?」

「フフッ」


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