オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
京夜side
待ちに待った、この日。
病院から帰宅した彼女は、懐かしそうに家具に指先を這わせていた。
何年も不在にしてたかのように。
そんな彼女の姿に思わず涙腺が緩む。
前はこんな風にちょっとしたことで涙ぐんだりしなかったのに。
彼女と出逢って、180度変わった俺がいる。
尻に敷かれたりご機嫌伺いをする友人がいたが、
正直言って、内心そいつらのことを馬鹿にしていた。
自分というプライドはないのか?……と。
だが、希和と出逢って分かった。
自分という殻を打ち砕いたとしても
それに見合う、いやそれ以上に価値のある幸福感がそこにあると。
中高生どころか、今時じゃ小学生でも分かりそうなそんなことが、
俺は28年間知らなかったし、知ろうともしなかった。
御影の社員数万人、関連企業も含めたら数百万人にも及ぶ従業員の頂点に立つ立場なのに
未だに知らないことだらけ。
特に恋愛に関しては……。
手術直後に比べたらだいぶ顔色も良くなったが、
でも時折見せる痛みに耐える表情が何とも言えぬほど痛々しく。
ぎゅっと抱きしめたい衝動を何度も何度も堪えて……。
きっと、俺が自分の欲求に正直に行動したら、
彼女は終始痛みに耐えないとならない。
まだ傷口が完全に癒えた訳じゃない。
最低限の傷の回復ということは重々承知している。
本当は完全に回復するまで完全看護で治療して貰いたいところだが、
1日でも早く退院したいという彼女の希望を最優先にした。
そんな彼女に家事をさせたくなくて、
俺はこれまで敢えて避けて来たことをすると決めていた。
それは………。