オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
自宅に到着した俺は、
希和が無意識に家事をし始めないように声を掛ける。
「シャワーを浴びて来たらどうだ?消毒したり、時間がかかるだろ」
「………あ、はい。では、お言葉に甘えさせて頂きますね」
「おぅ」
医師から説明を受けていたため、彼女の今の状態は理解している。
傷口は辛うじて塞がってはいるが、完治した訳ではない。
傷口に衝撃などを受ければ、開いてしまうこともあるらしい。
それに彼女の場合、傷がかなり深かったため、
元の状態に戻るには結構な時間がかかるという。
幾ら痛みに強いとは言え、出来る事なら痛みと無縁でいて欲しい。
1日も早く、彼女の傷が癒えるのを祈るばかりだ。
彼女がシャワーを浴びている間に出来る限り部屋を片付け、
風呂上がりの水分補給用に予め作っておいたミントウォーターをグラスに注ぐ。
ミントにはデトックス効果があるらしく、
腹部を損傷した彼女が出来るだけ無理な腹圧を使わず済むように。
それと、免疫力がアップするらしく、
病み上がりの体が少しでも楽になれるように。
俺に出来ることは無いかと、必死にネットで調べた。
執事の吉沢に話せば、すぐさま完璧な手配をしてくれるだろうが、それでは意味がない。
俺が自身の手で彼女の為に何かしなければ……。
そして、手軽に摂取できる物が無いか調べた結果、
フレーバーウォーターに辿り着いた。
少し前に流行ったということもあり、
ネットで検索したら、出てくる出て来る。
面白いほど沢山検索ヒットした中から、俺はミントをチョイスした。
夏だから冷えてる飲み物の方がいいだろうが、
病み上がりの体には常温の方が適している。
リビングテーブルの定位置にグラスを2つ置いた。
俺は仕事用のPCを開き、新規出店用の市場調査表に目を通す。
休日中とはいえ、時間は無駄に出来ない。
後回しにしていた仕事を片付けていると。
「お仕事ですか?」
ほんのりフローラルな香りを纏った希和が、
いつもの定位置、俺の右斜め横に腰を下ろした。
すると、グラスに気付き、嬉しそうにそれを手にする。
「これ、私の分ですよね?」
「他に誰がいる」
「ありがとうございます!戴いてもいいですか?」
「許可は不要だ」
「っ……、そうですよね」