オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「好きにしろ」
彼女の耳元にそっと囁く。
希和は俺がキスをすると思ったらしく、
俺の言葉に肩をビクッと震わせ、
俺の声に反応するように顔を横に向けた、次の瞬間。
ッ?!
唇に柔らかい感触が。
彼女は慌てて俺から離れようと。
そんな彼女の腰を抱き寄せ、悪魔心が顔を覗かせる。
「俺を襲うんじゃなかったのか?」
「う゛っ……」
さっきの威勢はどこへやら。
顔を上気させ、仰け反るように背を反らせた、その時。
俺は見逃さなかった。
「すまない。………大丈夫か?」
「っ………、はい、平気です」
体を反らせたことで、傷口に障ったようだ。
嬉し恥ずかしいような表情を浮かべた彼女が、
一瞬で苦痛に耐える表情をしたんだ。
そんな彼女の体をしっかりと抱きしめ、
呼吸が整うように背中を摩る。
俺に出来ることなんて、本当にこれくらいしかない。
今まで何不自由なく生活した来た俺だが、
今の俺は、本当に無力で。
彼女の苦痛を取り除くことすら出来ない。
深呼吸した彼女がゆっくりと顔を上げた。
何事もなかったかのような表情で俺の両肩に手を置き、
背伸びをしたかと思えば、
小悪魔の顔をちらつかせ、俺の唇を奪いやがった。
「フフッ、ご馳走様ですっ!」
「なっ……」
「これはまだ序の口ですからね!」
「ッ!?」
「覚悟して下さいね~♪」
希和は余裕の笑みを浮かべ、値踏みするように人差し指を上下させた。
「フッ、上等だ。いつでもかかって来い」
「いいんですかぁ?そんなこと言って」
「何がだ?」
「死にかけた人の覚悟ってものが分かってらっしゃらない」
「はぁ?」
「三途の川を渡りかけた私にとって、もう怖いものなんてないですから」
「フッ」
「笑ってられるのも、今のうちですよ~?」
「おかしいな。負傷したのは腹部だよな?倒れる前に俺が支えたはずなのに、頭をどこかで打ったか?」
挑発するような言葉を口にする彼女じゃなかったのに。
何がどうしたらこうなるんだ?
目の前の彼女はまるで別人のように見える。