オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
希和side
浴室のドアを閉め、その場にへたり込んでしまった。
みみみみみみみみみっ、見てしまったぁぁあああっ!!
きききききっ、きょきょきょっ、京夜様のお尻をぉおおおおッ!!!
尋常じゃないほどにバグバグと暴れる心臓。
今にも爆発してしまうんじゃないかと思うほどに。
過酷な稽古で心臓が悲鳴を上げることは死ぬほどあったが、
その時とは異次元の激しさ。
ぎゅっと瞼を閉じても、鮮明に焼き付いている。
首から背中にかけて程よく盛り上がった僧帽筋。
こんもりと盛り上がった上腕二頭筋。
引き締まった腰に、形よく綺麗に付いている外腹斜筋。
異様に長い脚の、特に大腿部後面に存在感を成すハムストリング。
そのどれもが『本物』なんだと興奮させる材料なんだけど、
その中でも1番釘付けになったのが、
キュッと引き締まり、抜群の形の良さが際立つ大臀筋と中臀筋。
これまで、男性のお尻をまじまじ見る事なんて無いし、
あんなにもカッコよくて綺麗なお尻を間近で見れただなんて。
しかもそれが、大好きなあの人のお尻だなんてぇ~!
ヤバい、思考が暴走してる。
よだれが無意識に溢れて来るじゃない!
今まで様々な武術を習うにあたり、沢山の男性と関わって来た。
体を密着させることが多いし、夏場は薄着になることも多く、
自然と目に付く筋肉美だったけど、
やはり好きな人の体は、一味も二味も違うらしい。
頬をパンパンっと軽く叩いて気を引き締め直す。
ダメッ、こんな事じゃ、実行する前に逃げ出したくなっちゃうじゃない。
瞼を閉じて、ゆっくりと深呼吸。
そして、胸に刻んだ想いを振り返る。
遡ること2日前。
退院の目途が付いた私に、担当の看護師さんが言った言葉。
『これからの人生、したいことだけを……』
命を落としてもおかしくない状況で、
私に掛けて下さった言葉だと思う。
その看護師さんは大学時代の国際大会で怪我した時、
偶然にも手術に立ち会った看護師さんだった。
私は殆ど覚えてなかったけれど、
入院生活も御影のサポートもあり、特別扱いということもあって
看護師さんは私をしっかりと記憶していたそうだ。