オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


いつもは鍵が掛かっているそこは、納戸のような小部屋かと思っていた。

京夜様は部屋に入ると機材のスイッチを次々に入れる。

室内は少し深みのあるアクアブルーの灯りで照らされ、

南の島に辿り着いたかのように、どこからともなく海の波音や風音が聴こえて来た。

ちょっと薄暗い感じだけど、何ら変わらないお洒落なリビングみたいな……。


「この部屋全体が酸素カプセルだから」

「えっ?」

「特注で作らせたって言えば、分かるか?」


御影の力をもってすれば、出来ないことなんて無いだろう。

ソファにゆったりと腰を下ろした彼は、私を手招きする。

唖然としながら私もそこへ腰を下ろすと、彼はゆっくりとした口調で話し始めた。


「トレーニングに取り入れようと思ったんだが、あまりにも狭くて5分ももたなかった。入っている間は他のことが何も出来ないし、幾ら体には良いと言っても、ストレスの方が多くて俺には無理だと感じた。だが、部屋丸ごとだったら気分的にもリフレッシュ出来ると思って」

「………なるほど」


恐るべし、御影の力。

どんなやり取りだったか、安易に想像が出来る。

確かに、全身に運ばれる血液は酸素が必要だし、新陳代謝も高まる。

疲労物質の乳酸も酸素によって分解が促進されるため、酸素は生きていく上で必要不可欠。

それが、生活する空間で取り入れられるだなんて。


「映画でも観るか?」


更に驚く私をよそに、彼は楽しそうにリモコンで操作を始める。

すると、まもなくして壁一面に取り付けられた大画面のスクリーンに映像が映し出された。


「あっ、これって……」

「好きなんだろ?」

「よくご存じで!」

「フッ、まぁな」


京夜様は得意げな表情でボトルに口を付けた。

スクリーンに映し出されたのは、私が一番好きな外国映画。

王道のラブストーリーなんだけど、

所々にコメディータッチが効いており、観てて飽きない作品。

久しぶりに観たそれに、思わず釘付けになっていると……。


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