オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


無意識とは少し違う。

ちゃんと心が反応した。

だって、何事も無かったかのようにはしてはいけない気がして。

私が負傷していなければ、今頃正式な夫婦になっていた訳で。

それが心のどこかで引っかかっているのは確か。

だからこそ、何もせずにはいられなかった。


自分のベッドに横たわる私の横に彼が静かに腰を下ろした。

ほんの少し前に撫でられたその場所に再び指先が辿る。

いつの間にか当たり前みたいに感じてしまっているその行為は、

彼が私を大事にしてくれているサイン。

だから、いつもはその行為をただただじっと嬉しく感じ取っているのだが、

今日ばかりは違う。

別に彼の手を払いのける訳じゃない。

彼の指先が触れている箇所よりもっと至近距離に身を詰めただけ。

すっかり目覚めた私は、稽古の賜物と言うべき俊敏な動きで

彼のリーチの中へと身を寄せていた。

間合いを詰めてしまえばこっちのもの。

あとは『勇気』さえあれば、何とかなる。

その先がどうなるかだなんて、知らなくていい。

私は無我夢中で彼に抱きついた。


「うっ……」


咄嗟の行動で力加減をセーブするのを忘れてしまった。

彼が呻く声が聞こえ、しまったと後悔したのは後の祭り。

彼がいつものように私の腕を軽くタップした。

それに反応するように腕の締め付けを緩めはしたが、完全に解きはしない。

だって、ここでふりだしには戻れないもの。

いつもと違う私を不思議に思ったのか、彼がもう一度タップした。

格闘技出身の私に対して、タップすればいいと理解している彼は、

今の私の行動がきっと不思議でならないだろう。

だって、今の私。

本当に我武者羅だと思うから。


顔を彼の胸元に押し付けるようにして恥ずかしさを隠し、

もう後戻りは出来ないんだと自分自身に言い聞かせながら………。


「連れて行って下さい。……………京夜様の………お部屋に」


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