オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


震え気味の私の声に僅かにビクッと体を反応させた彼。

でも、心音は早まることなく、規律のいい音を刻んでいる。

そんな些細なことにほんの少し切なさを感じながら、

それでも後には引けないと、勝負魂に火が付いていた。


そんな私を、子供を宥めるかのように優しく撫でて、

いつも以上に落ち着いた声を浴びせて来た。


「どういう意味か、分かって言ってるのか?」

「…………はい」

「今の状況をか?」

「……………はい」


京夜様の言うことは正しい。

状況からしたら、普通じゃ考えもしないことだろう。

まだ完全に傷口が塞がった訳じゃないし、

それこそ痛みだってある。

気休め程度に痛み止めは飲んでいるが、元々効きが悪い体質。

幼い頃から怪我が多かったせいか、

しょっちゅう痛み止めを服用していたせいで、効きが悪い。

だからと言って、どうなることでもない。

我慢さえすれば、済むことだ。


可愛らしさが微塵もなく、

色っぽさだって高校生に負けるほど。

その上、男性が軽々持ち上げられるような華奢な体でもなく、

挙句の果てには負傷した状態の体。

どうこう考えても、普通じゃあり得ない。

だけど、何となく。

今でなくてはダメな気がして。

今日を逃したら、きっと後悔しそうで……。

可愛げもなく、私は彼にしがみついていた。


「負傷したのは頭じゃないだろ」

「…………」

「無反応かよ」

「…………」

「ったく、傷に触っても知らねぇぞ?」

「……………構いません」

「俺が構うってのに」

「…………」

「無視かよ」


分かってる。

京夜様が気遣って下さってることは。

だけど、今日ばかりは無理してでも彼の傍にいたいから。

今日ばかりは譲れない。

はしたないのは分かってる。

本当は私だって嫌なのに。

ちゃんと結婚して籍を入れて、正式に夫婦になってからだって思ってたから。

だから、こういうやり方は本意じゃない。

だけど、何だか怖くて。


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