オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


私の必死さに根負けしたのか。

彼は大きな溜息を付いた。

それでも解こうとしない私に彼は3度目のタップをした。


「分かったから」

「…………」

「この体勢じゃ、連れてけないぞ」

「っ………」


彼の言葉で漸く我に返った気がした。

彼の言う通り、しがみついた状態じゃ何もできない。

私はゆっくりとホールドした腕を緩め、彼からほんの少し離れると。

彼は鼻で笑いながら、私の頭を軽くポンポンと撫でた。

そして、体勢を立て直した彼は、長い腕で私の体をしっかりと抱きしめ抱え上げた。


いつもよりゆっくりめなストライド。

恥ずかしさもあって彼の胸に顔を埋めていると、


「やっぱり、少し軽くなったな」

「へっ?」

「明日は栄養のあるものでも食べに行くぞ」

「……………はい」


突然、何を言われたのか、よく分からなかった。

よくよく考えれば、理解できる。

あの日以来、まともな食事すらしておらず、

今日だって、殆ど残してしまった。

負傷した傷のせいでホルモンのバランスが崩れ、

それを補う為の薬が結構強くて、吐き気を伴う。

だから、まともな食事が摂れなくて、体重が激減したのは事実。

元々筋肉質だから、体重も落ちやすいのかもしれない。

彼の何気ない一言に感慨深く浸っていると、

ハーブ系の香りが漂う彼の部屋に到着していた。


ゆっくり下ろされた場所は、数時間前に自分がベッドメイクした彼のベッド。

しかも器用に掛布団を捲ってくれたようで、

初めて彼がいつも寝ているその場所に横たわった。


フットライトだけの室内は予想していた以上に薄暗く、

ベッドサイドに立っている彼の顔が影になっていてよく見えない。

自分から我が儘を言ったけれど、この後どうするべきかだなんて知る由もないから。

全身を彼に委ねる他ない。

瞼をギュッと閉じて、彼に身を任せていると。

フワッと掛布団が掛けられ、額に柔らかい感触がした。


「おやすみ」

「………?…………っ?!」


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