オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
玄関ドアを開けると、エプロン姿の希和が出迎えてくれた。
それも、今にも抱きしめたくなるほど、とてつもなく愛らしい笑顔で。
ほんの数時間、半日離れていただけなのに、こんなにも感動するとは。
それほどまでに俺が彼女を欲しているって事か。
革靴を脱ぐため、玄関横にあるシューズボックスへ。
すると、スッと足下に俺愛用のルームシューズが揃えて置かれた。
「サンキュ」
「昼食はお済ですか?」
「いや」
「では、軽いものをご用意しますね」
「あ、いや、いい」
俺は彼女にジャケットを差し出す。
希和は俺の心中を察してくれているようだ。
本当ならばどうだったのか聞きたいだろうし、言いたいこともあるだろう。
だが、それに触れないのがデキる女・希和だ。
何事もなかったかのように振舞ってくれる。
それが、とてつもなく有難くて。
踵を返した彼女を背後からそっと抱きしめた。
「どっ、どうなさいました?」
「いい女だな」
「っ……、今頃お気付きで?」
「いや、改めて思ったんだ」
「そんなにベタ褒めでも、何もしてあげれませんよ?」
「フッ、俺がするから、気にするな」
「え?………するって、何をです?」
「さぁ?何だろうな~?」
俺が彼女の耳元に『ヒ・ミ・ツ』と囁くと、
希和は驚いたような嬉しいような、何とも愛らしい表情をした。
「ラテでも飲むか?」
「あ、はいっ!」
「ん、じゃあ用意するから少し休んでろ。どうせ、夕食の準備でもしてたんだろうから」
「っ………、バレました?換気扇ガンガン回したんだけどなぁ?」
「フフッ」
「何がおかしいんです?」
鼻で笑った俺に対し、ぷくっと頬を膨らませた希和。
仕事は完璧にこなす上に、とても気が利く大和撫子なんだが、
時折ちょいちょい天然な彼女が顔をのぞかせる。
それがまた、たまらなく愛おしくて。
「コレはパジャマじゃ………ないよな?」
「あっ!」
「昼寝してるように言ったはずだが?」
「うううっ………」
「夕食までまだ時間があるから、まったりしよう」
「…………はい」
俺は彼女お気に入りの抹茶ラテの準備に取り掛かった。