オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


素早くシャワーを浴びた俺は、物音を立てずに隣の部屋へと。

彼女に気付かれないようにドアを閉め、

愛用のディフューザーをセッティングする。

勿論、未開封のものだ。

炎症を抑えたり、痛みを和らげる効果のあるラベンダー。

殺菌作用や血行改善効果のあるペパーミント。

それから、最近医学界でも注目を浴びているというクラリセージ。

そして、彼女好みの甘い香りをプラスしたオリジナルオイル。

ベッドサイドにオイルをセッティングして、不意に視界で捉えたモノ。

オフホワイトのタキシード姿の俺がソファに座り、

スマホ画面を眺めてる写真。

いつの間に撮ったんだ?

恐らく衣装合わせでの待ち時間に撮られたものだろうけど。

スマホで撮ったであろうものが、2Lサイズになってるし。

自分の写真を見るのは気分がいいとは言えないが、

彼女がこうして飾ってくれているということが、何だか嬉しくて。

俺はそれを手に取り、そっとフォトフレームのトンボ(裏側の留め金)を指先で弾き、

写真をそっと取り出して、サイドテーブルの上にあったペンで………。




何事も無かったかのようにリビングのドアを開けると、ダウンライトのみの間接照明。

普段ならダイニングに夕食が用意されているのだが、

今日はリビングテーブルの上に何やら沢山用意されていた。


「京夜様、勝手に決めて申し訳ありません。今夜はゆっくりと………如何ですか?」


用意されているのはどれも、酒に合うような料理ばかり。

彼女が負傷して、晩酌どころではなかったし、

むしろ、断酒してでも彼女の回復を祈っていたほど。


「傷がまだ痛むんじゃないのか?薬だって飲んでるみたいだし」

「軽くなら大丈夫ですよ。それに、傷口はちゃんと塞がってますから」

「そうなのか?」

「はい、ご安心下さい。時々痛むのは、子宮が収縮したりしてるからです。産後のママさん達と同じ感じで、元の形に戻ろうと頑張ってる為の痛みですから、何ともありません」

「それならいいが………。無理だけはするな、いいな?」

「はい」


にこやかに頷く彼女の顔を見て、俺は少し安堵した。



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