オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
目の前にある自分の指先がほんの少し濡れている。
それは、先ほどの行為が現実に起こった事だと肯定してるんだけど、
ティッシュで拭き取ったり指先で拭ったりしたら失礼に値するし、
それこそ、ペロリと嘗めでもしたら、完全に変態だ……私。
気にせず何事もなかったようにしようと顔を上げた、次の瞬間。
「バイ菌か?………俺」
「あっ、いえ、そうではなくて………。その、京夜様の唇の感触が………」
バツが悪そうな顔つきでティッシュを1枚シュッと引き抜いた彼は、私の言葉に唖然とした表情を浮かべた。
「何を言い出すかと思えば、ホント、期待を裏切らないな」
「えっ?」
「フッ、………これならどうだ?」
「んっっっっ!!」
柔らかい笑みを浮かべたのは一瞬で
瞬く間に魔王の表情に変わった彼は私の手首をガシッと掴み、
目元を細めながら薄い唇が私の指先に覆い被さった。
もう言うまでもない。
私の人差し指は彼の口腔内に収まり、艶めかしい音を立てながら吸われてーーー。
数秒間吸い続けた彼は満足そうに口を開け、
「こういうのが好きなのか?」
「ふぇっ?」
「聞いてみないと分からないものだな」
「・・・・・」
指先に残る余韻に脳内が思考を完全に拒否しているため、
彼の言葉の意味を理解するのに時間がかかってしまった。
「ちっ、違いますよっ、京夜様ッ!って、完全に違う訳じゃないんですけど、何ていうか………」
彼の突飛な行為に動揺して紅潮したのも事実だし、
彼に吸われるというか、触れられるというか、
とにかく、京夜様とこんな風にイチャイチャしたいのは本当なんだけど。
うーん、言葉で言い表すのは難しい。
決して今の行為が嫌な訳ではないと、必死に表情で伝えようとした、その時。
「女心は分かりづらいな」
「え?」
「俺はこっちの方が好きだけど………」
「んっ…………」
彼と出会って初めてかもしれない。
こんな風にさらっと。
しかも、ストレートに彼の言葉と気持ちが伝わって来たのは。
いつもは不意を突かれたり、焦らされたりするのに
今の彼は飾らない素の御影 京夜なのかもしれない。
後ろ首を支える少し力んだ指先が次第に優しく
そして、触れるその場所の先にはーーーーーーー