オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


「ごめん、ちょっと悪酔いしたかも」

「あ、いえ………」


久しぶりの夜の味?

アルコールの吐息を纏った口づけは、

心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい濃密で。

いつ呼吸していいのかすら分からずじまい。

だけど、色々な面の彼を見れるのは、私だけに許された特権でもある。

溜息まじりに髪をかき乱す彼も珍しく、ついつい興奮してカシャッ。


「何、今の音」

「…………犯人はこの子です」


悪びれた様子もなく、私はスマホを見せると。


「盗撮が趣味なのか?」

「はい?」

「部屋のアレも……」

「ん?…………あっ、バレました?って、いつ私の部屋に?」

「さっき」

「何をしに?」

「内緒」

「はい~~?」

「そんなことより、撮るなら撮ると言えばいいのに」

「それじゃダメなんです!自然体の京夜様じゃなきゃ……」

「フッ。ホント、変わった奴だな」

「今頃、お気付きで?」


カメラ目線のシュッとした写真なら、経済誌でいつでも見れる。

そういう商業的な表情じゃなくて、

私の前でだけ見せてくれる表情だからいいんじゃない。

ハニカミながら彼はグラスに口を付けた。

そんな彼を横目に、撮ったばかりの彼を眺め、自然と頬が緩む。


「あ、そうだ。10月の頭でいいか?」

「はい?何の話ですか?」

「式」

「式とは?」

「式と言ったら式しかないだろ」

「え?……………あっ」

「まさか、忘れてたとかじゃないよな?」

「いえいえ、とんでもございません!滅相もございませ~~~ん」

「フッ、調子のいい奴」


彼は仕事用の手帳とタブレットを差し出し、

自身のスケジュールと御影グループの行事スケジュールを照らし合わせるようにした。


「9月末の決算セールが終われば一段落するし、10月半ばから年末向けの催事が始まるから、ちょうどその間しか時間が取れそうにないんだけど」

「はい」

「明日にでも式場に確認を取って、それから両親に伝える方向でいいよな?」

「……………はい」

「何だ、今の間は」

「酔ってると仰る割には回転が速いので、凄いなぁと」

「フッ、俺様を誰だと思ってるんだ?」

「そうでしたね」


彼の言葉に胸の奥が重く痛んだ。


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