オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「すまない、……困らせて」
「っ……」
「こういう天邪鬼な性格を直さないとダメだな」
「………」
「希和は今のままでいい。………今のままがいいから」
京夜様は私を優しく抱きしめ、溜息まじりに呟いた。
そして、髪をそっと撫でて………。
私は彼の性格が嫌いなんじゃない。
そりゃあ、時には困り果てることもあるけど、
それらも全部含めて『御影 京夜』だし。
我儘だけど優しくて。
頑固だけど誠実で。
クールだけど情に厚くて。
色んな顔を持っているからこそ、魅力的で。
そういう京夜様だからこそ、私は惹かれたんだと思うから。
私の方こそ、直さなければならないことが沢山ある。
今だって、こんなに近くにいるのに
言わなきゃならないことがあるのに。
謝らなければならないことがあるのに。
この先をどうしたらいいかを一緒に考えないといけないのに。
そのきっかけすら作れずにいるのに。
考えれば考えるほど、自分が愚かで。
京夜様をお守りする時の意志の強さは微塵もない。
寝て起きたら何事も無かった事になってるかもしれないだなんて考えるほど、心は弱くて。
今も、優しさが溢れている彼の顔をまともに見ることすら出来ずにいる。
気づけば、彼のパジャマが私の涙で濡れていた。
そんな私を労わるように、彼は優しく背中を撫で、髪を撫で。
頬を伝う涙まで拭ってくれて。
いっそ、このまま、
彼の腕の中で死ねたらいいのに……、そんな事ばかりが脳裏を過る。
「いい加減、泣き止まないと襲うぞ」
「ふぇっ?」
「フッ、やっと俺の顔を見たな」
思わぬ彼の言葉に涙がピタリと止まった。
本気で言ってる訳じゃないと分かっているのに、
彼の言葉はいつも本気に聞こえてしまう。
私を落ち着かせようと、彼はおどけた表情をした。
全てが本当の彼で、いつだって私のことを大切に思ってくれている。
「京夜様っ、だぁ~~い好きっ」
「フッ、当然だろ」
再び彼の首に抱き着いた。
もちろん、力は加減して。
触れる肌が少しチクッとするのは、彼が男性だという事を改めて実感した。
「京夜様、チクチクします~~」
「え?あ、ごめん」
「ウフフッ、私しか見れないワイルドな京夜様だ」
「フッ」
彼は恥ずかしそうに伸びかけた顎髭に触れた。