オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
京夜side
お中元商戦の売り上げ報告書とオータムフェアの折込広告のデザイン版の最終確認を終え、
会議室から足早に自室へと向かいながら、とある場所に電話を掛けようとした、その時。
意外な人物から着信が。
「はい」
『突然お電話致しまして、申し訳ありません。今、お時間宜しいでしょうか?』
「……はい、ご用件は?」
顔見知りとは言え、出来る事なら会話すらしたくない相手。
俺は出来るだけ冷静に装ってるつもりだが、
声のトーンから不機嫌さが伝わっているだろう。
それでも、無言で切るわけにもいかず、仕方なく会話を続ける。
『先日の件でお電話させて頂きました。弁護士さんから、告訴はしないとのお話伺いまして………、本当に何と申し上げたらいいか………。有難う……ございます』
電話の相手は、峯菱悠人。
希和に重傷を負わせた影の人物・八雲綾女の恋人でもあり、
希和の大学時代の先輩でもある。
その男が弁護士を通さず直接電話を掛けて来たという事は、それなりの報告があるのだろう。
俺は耳を澄まして男の言葉を待った。
『彼女、……綾女には自首するように話し、今朝、付き添って警察に行ったんです。すると、被害届すら出ていないとのことで……。弁護士さんから詳しい状況を伺いまして、一先ずお礼だけでもと思いまして。改めまして、お詫びに伺わせて頂きたいのですが……』
「謝罪は結構です。希和も会いたくないと思いますので」
『ですが……』
「それよりも、希和を傷を負わせた相手はどうなりましたか?」
俺は至極冷静に聞き返した。
本当は既に手配済みだ。
御影の総力で既に突き止めてあり、
水面下で国際指名手配レベルの対応を取るように手を打ってあるのだ。
希和のたっての願いで、告訴どころか被害届すら出さないというのだから出来る事に限りがある。
抹殺したいほど憎いが、彼女がこれ以上傷つかないことが最優先。
希和が言うには、峯菱悠人を思うあまりに周りが見えなくなってしまったのだろうと。
だから、愛ゆえの行き過ぎたことだから、理解出来ると。
俺には理解しがたいことだが、彼女が望むなら……と、必死に我慢している所だ。