オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
『申し訳ありません。既に日本を出国しているみたいですし、綾女からの連絡も絶っているようで………』
「でしょうね」
『男の連絡先等、こちらが知っている情報は弁護士さんを通じてお伝えしたのですが……』
そんな事は分かっている。
いちいちそんな事を説明するために電話を掛けて来るな。
俺の知らない希和を知っているというだけで、腹が立つのに。
俺の大事な希和を負傷させ、姿を消した奴を差し出せないだなんて話にならない。
「新たな情報が無いのであれば、今後連絡は結構です」
俺は敵意剥き出しの状態で苛立ちを抑える事が出来なかった。
すると、
『あのっ、御影さん』
「…………はい」
『不確かではあるのですが、女がフィリピンにいるみたいです』
「フィリピン?」
『はい。預け手荷物のタグシールと搭乗券を綾女が見たと言うんです』
「例え見たとしても、女がいるかどうかは分からないだろ」
『それが、大雑把の性格なんでしょうね。セカンドバッグのようなものの中に、女の名前が記されてる搭乗券が何枚かあったそうで……』
詳しく話を聞くと、搭乗券はバッグの中に適当に入っていたという。
その日付が最近のものだったから、記憶に新しいそうだ。
男の名前は岡田洋兵(おかだ ようへい)37歳。
女の名前はモニカ・ガルシア 。
フィリピンのセブ島とを頻繁に行き来しているようで、
恐らく、今までも大金を手にして女と豪遊しているのだろう。
観光地、それもリゾート地に的を絞ればあっという間に炙り出せそうだな。
「分かりました。こちらでも調べてみます」
『希和………さんの具合は如何ですか?もう退院されたのでしょうか?』
「御心配には及びません。では、私はこれで。仕事がありますので……」
『あ、はい。すみません、お忙しい所、お時間を割いてしまいまして』
「いえ。………では」
希和の状態を伝えることなく、電話を切った。
伝えた所で見舞いに来られても困るし、
何より、1分1秒でも俺が奴と話したくなかった。
これを嫉妬というのだろうが、そんな事を気にしている場合じゃない。
俺はすぐさま執事の吉沢に連絡を入れた。
峯菱から得た情報をもとに、ありとあらゆる組織に圧力をかける為に。