オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
まさか、浴室で倒れてるんじゃないかと心配になり、声を張る。
けれど応答はなく、勿論シャワーの水音さえ聞こえてこない。
恐る恐る浴室のドアを開けてみるが、彼女の姿はなかった。
ただならぬ状況に脳がついてこない。
ウォークインクローゼットの中を始め、自分の部屋、ゲストルーム、
書斎、オーディオルーム、ランドリー室、トレーニングルーム……
片っ端から確認してみても、彼女の姿はなかった。
残る部屋は限られている。
酸素カプセルルームと納戸のような小部屋と、
それから、キッチン横にあるパントリーと………
次々とドアを叩き開け、彼女の名前を叫ぶが返答がない。
「クソッ、何でこんなに部屋が無駄に多いんだっ」
ドアを叩き開け、いないと分かると拳で壁を……。
気づいた時には手がジンジンと熱を帯びていた。
キッチンで足を止めた俺の視界に入ったのは、いつもと変わらぬ光景。
夕食を食べに行くと伝えてあるのにも関わらず、
調理台の上には出来上がった料理が並んでいた。
スープ、煮物、焼き物を始め、
冷蔵庫の中には、保存容器に入った料理がぎっしりと積み上げられていた。
どういうことだ?
彼女が何をしたいのか分からず、思考が完全に停止する。
髪を掻き乱し、一旦冷静になろうと深呼吸した、その時。
ダイニングテーブルの上に1枚の紙があるのに気が付いた。
それを確認しようと、恐る恐る近づく。
たかが紙1枚。
だが、とてつもなく嫌な予感しかしない。
大きく息を吐いて、それを手に取った。