オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「エイミー、もしかして………?!」
「ハ~イッ、マイベイビーよ~~」
「ええええぇ~~ッ!!おめでとう~~」
エイミーは生まれたばかりの赤ちゃんを抱いていたのだ。
周りを見回しても旦那さんらしき人物はいない。
「旦那さんは?」
「ア~ッ、ディックは仕事で、どこかの国にいるわぁ~」
「えっ、どこかの国?」
気になることだらけでプチパニック状態だけど、
エイミーの満面の笑みで、些細なことは気にならなくなるほど
本当に久しぶりにホッと出来る感じがした。
エイミーは親日家なこともあり、日本語が堪能で、オランダの大学で医師をしている。
恋人がいるとは聞いていたが、いつの間に……。
エイミーの車がある駐車場に到着すると、
彼女は慣れた手つきで我が子をチャイルドシートに乗せる。
その表情はすっかり母親だ。
自分の知らないエイミーがそこにいた。
エイミーの家は郊外にあり、空港から車で2時間ほどかかるらしい。
赤ちゃんの名前はララ(Lala)、生後3か月の女の子。
エイミーに似てふんわりとしたブロンドの髪が印象的で
色白な肌に似合うグリーンの瞳がとても愛らしい。
車を発進させると、優しい声音で子守唄を歌うエイミー。
車の揺れも心地いいのか、ほどなくしてララはウトウトとし始めた。
そんな我が子をルームミラーで確認したエイミーは、安堵の溜息を漏らした。
すると、エイミーは優しい顔つきで自身のこれまでの経緯を話してくれた。
ララの父親は大学時代からの恋人で、
子供は生まれたが、まだ入籍はしていないらしい。
だから、子供を中心にそれぞれの生き方を尊重していると言う。
日本ではまだ法律で認められていない別姓問題。
夫婦と言っても色々な形があるのだと、改めて認識した。
籍を入れても他に好きな人を作る人もいれば、
同じ家の中でも生活を完全に別々にする夫婦もいるという。
エイミーは籍を入れなくても、お互いに必要とし愛し合っているという。
今後入籍するかどうかは、話し合いで決めていくと話してくれた。
今までの自分の考えが如何に浅はかで未熟だという事を思い知る。
世の中は広い。
1000人居れば1000通りの考え方があるのだと、改めて感じた。