オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
管理室から一旦自宅へと戻り、急いでシャワーを浴び終えた俺は、
喉を潤そうと冷蔵庫を開けた瞬間、溜息が漏れ出した。
何日前から意思を固めていたのだろう。
俺にはそんな素振りを微塵も見せずに。
冷蔵庫の中には、びっしりと詰められた保存容器が。
勿論、その全ての容器の中に調理された料理が入っており、
上から順に賞味期限の短い料理が並べられ、
しかも、栄養バランスも完璧なのは言うまでもない。
保存容器が色分けされていて、肉、魚、野菜などが一目瞭然で分かるようになっている。
冷蔵庫の中だけではない。
冷凍庫の中にもメモ付きの保存料理がびっしりと。
それを目の当たりにした俺は、彼女が数日で戻らないことを悟った。
脱力感に襲われた、その時。
リビングテーブルの上に置いておいた携帯電話が鳴り出した。
吉沢から報告の連絡が来たのだと思った俺は、慌てて携帯を手にし、息を呑んだ。
ディスプレイには『母親』の文字。
こんな朝早くから電話を掛けて来る事なんて、滅多にない。
一瞬で嫌な予感がした。
「はい」
「京夜?………おはよう」
「………ん」
「朝からこんな話はしたくなかったんだけど………」
「……………何?」
「その、…………希和さんのことなんだけどね」
「………ん」
「暫く、…………一人でいられる時間をあげれないかしら?」
「それ、…………どういう意味?」
「言葉のままよ。今は一人で考えれる時間が欲しいってこと」
「…………」
嫌な予感は的中した。
しかも、母親の口から聞かされたことに、悔しさが込み上げる。
俺には相談出来なくても、母親には意思を伝えていたということが。
握りしめた拳がわなわなと震えだし、痛みを帯るほど噛みしめていた。
「京夜?………聞いてる?」
「……………聞こえてる」
「心の整理がついたら、必ず連絡が来るから」
「………それって、いつだよ」
「…………分からないわ」
「1か月?2か月?………それとも、半年?」
「………」
「まさか、1年とか言わないよな?」
「…………それは、何とも」
「っんだよッ、それ………」
虚無感に襲われ、その場にへたり込んだ。
髪を掻き乱し、ソファーの背面に拳を打ち付ける。
けれども、行き場のない感情は虚しさが増すばかりで。
ますます自分自身が惨めに思えた。