オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
希和side
「Hoi!(ホイ:親しい友人との挨拶)」
テラスに置かれているウッドチェアーに腰掛け瞼越しの朝日を感じていると、
甘い香りと共にエイミーが姿を現した。
エイミーはココアの入ったマグカップを差し出すと、
静かに腰を下ろし、カップに口を付ける。
そんな彼女を見つめていると、エイミーは眉根を寄せてジェスチャーした。
ーーーーー『薬は飲んだのか?』と。
日本を離れて数日。
さすがに何も伝えないのは心が痛んで、昨夜これまでの経緯を打ち明けた。
すると、エイミーは号泣しながらも、最後まで私の話を聞いてくれた。
医師として、女性として、そして………友人として。
最初は冗談かと思って聞き流していた彼女だが、
手術痕を見せると、その表情は一変した。
そして、日本から持参した診療記録の写しを見せると、みるみるうちに青褪めたのである。
その表情を目の当たりにした私は、やはりこれが現実なのだと悟った。
今日はエイミーが所属している大学病院に行くことになっている。
私を心配したエイミーは、自らの目で確かめたいとすぐさま手配したのだ。
有難い。
セカンドピニオンは大事だと言うが、
セカンドだとか、サードだとかそんなことは関係ない。
この現状から少しでも好転出来るのなら、どんなことでも試したい。
何故、日本を離れたのかと問われれば、答えは単純。
日本にいる限り、マスコミの餌食になってしまう。
あの人の足手まといにはなりたくない。
御影を背負って立つ人だから、常に胸を張っていて貰いたいから……。
紹介して貰った病院で治療することも考えた。
けれど、近くにいるという事が一番危険だと思ったから。
私は狡くて弱い。
『医師』という肩書に縋るしか考えが働かなかった。
勿論、エイミーは気心が知れた友人でもあるから
ここへ来るという決断に迷いは無かった。