オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
ララを迎えに行くと、エイミーの母親が食事を用意してくれていた。
以前に何度かビデオレターでやり取りした事もあり、実の娘のように接してくれる。
優しいエイミーの母親を見ていると、
不意に日本にいる母を思い重ねてしまった。
エイミーの家に着いた頃には陽も傾き始めていた。
エイミーがララを寝かし付けている間、
私は気持ちを落ち着かせようと湖畔へと散歩に出た。
夕陽が湖面に反射し、キラキラと輝くその光景は何度見ても素晴らしくて
息苦しい胸の奥が洗われるような気がした。
夏は白夜、冬は天然のスケートリンクになる為、
世界中から沢山の人が訪れるという。
日没が21時過ぎらしく、ここが外国なのだと改めて実感する。
地元の人の船が停泊するための桟橋だろうか?
船らしきものは見当たらないが、
歩いてもびくともしないしっかりとした造りの桟橋を見つけた。
吸い寄せられるように桟橋をゆっくりと歩き、肌を撫でるそよ風を感じて。
桟橋の端へと辿り着いた私は、湖面に映る自分の姿をじっと見つめる。
そこには、疲れ切った自分がいた。
本当は日本を離れる前から決めていた。
踏ん切りがつかなかっただけで、心の奥では分かっていた。
運命や宿命という言葉に踊らされるのが嫌だっただけ。
でも、現実は何一つ変わらない。
何千回、何万回と神様に祈ったところで、何も変わらなかった。
もう、…………いいよね。
湖面に一滴(ひとしずく)が零れ落ちると、箍が外れたかのように溢れ出した。