オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
15 動き出した歯車
京夜side
「坂本」
「はっ、はいっ!」
「では、このマスコットの名前を公募する形で、来週から今月末迄の期間、入口とセンター広場に投票場所を設けておいてくれ」
「来週からですか?!」
「あぁ。副賞として、ハワイ旅行4泊6日の旅行券を付けて」
「ハワイ旅行ですか?!」
「いちいち聞き返すな」
「あ、はい、すみません。すぐに手配します」
希和がいなくなって既に1ケ月が過ぎていた。
俺は仕事に没頭し、彼女が帰って来た時に少しでも胸を張っていられるようにと。
だが、本心は寂しさと悔しさで感情をコントロールするのが難しく、
仕事に打ち込むことで感情を押し殺しているのかもしれない。
本当に彼女は戻って来てくれるのだろうか?
自社を独自の路線でこれまで経営して来たが、
やはり時代の流れがあるのと同じで、
世界的にも消費者の求める傾向が少しずつ変化しているのも事実。
これまで築き上げてきた高級志向のブランド路線から
唯一無二の拘った快適な暮らしを提案する路線へと移行するような形で
少しずつでも進化出来るようにと挑戦することにした。
今や世界的規模でもエコロジーを基調とした最先端の技術が次々と出てくる中、
我が社も負けじと企画・開発していかなければならないのだから。
これまでも、公募という形でイベントを企画した事はあるが、
自社ブランドのキャラクターは設けていなかった。
それは、ターゲットとする層が30代以上の世代だったからなのだが、
これからの時代は、高級志向だけでは成り立たない。
ファミリー層も含めた若い世代にもターゲットを向けた商品開発が必要で。
まずは、敷居を下げることで顧客を少しずつ拡大しようと考えた。
月に一度、給料日の後にご褒美感覚で買い物に来て下さるお客様に
半月に一度、週に一度と回数を増やして貰うためにも。
それは、お客様だけではない。
働く側にも意識改革が必要で、俺自身が率先して行動することで成立すると考えたのだ。