オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「失礼します。専務、お呼びでしょうか?」
「ん、忙しいのに悪いな」
「いえ、大丈夫です」
「これから出発するから、後の事は頼むな」
「はい、承知しました」
常務に仕事の引継ぎを済ませた俺は一旦自宅へと戻り、
軽くシャワーを済ませてから、とある場所へと向かった。
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「うううっ………、あぁぁぁ……」
凝り固まった背中や肩を解すように背筋を伸ばし、体中に新鮮な空気を吸い込んだ。
日本を離れて15時間。
日本ならすっかり日が暮れている時間だが、ここはちょうど日没の時間らしい。
地平線に少しずつのまれていく夕陽を眺め、深呼吸した。
空港から手配しておいた車で、一先ずホテルへと向かう。
海外生活の経験もあるし、海外渡航の経験も数えきれないほどあるが、
こんなにも緊張したことは未だかつてない。
母親に釘を刺され、彼女の行方を捜索することを一度は諦めた。
けれど、どうにもこうにも腑に落ちなくて。
何が原因なのか。
一体、何があったのか。
俺自身が納得できる何かを掴むまで、慎重に行動しようと心掛けた。
母親の監視もあるだろうから、
親のコネやつては一切使わず、御影というカードも使わずして独自の方法で調べ上げた。
すると、衝撃的な事実に辿り着いた。
一時は昏睡状態だった彼女だが、
無事に退院出来たこともあり、俺はすっかり安心していたのもつかの間。
彼女が忽然と姿を消した理由は、やはりあの時の傷が関係していた。
担当医が命に別状はないと診断したのは確かだが、
その後に別の症状が出ていたことに気付きもしなかった。
彼女が俺に心配かけまいと平然を装ったのだろうが、
何故、気づいてやれなかったのか。
悔やんでも悔やみきれない。
やはり、毎日一緒のベッドで寝るべきだったんだ。
そうすれば、彼女の少しの変化にも気づけたのかもしれない。
今更ながらに自分が情けなくて、ぶん殴ってやりたい衝動に駆られる。
彼女は今、どんな気持ちでいるのだろうか?