オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
翌日、俺は彼女がいるという街へと向かった。
海外での運転経験も豊富な俺だが、
やはり緊張しているせいか、長閑な景色さえも違って見える。
少しずつ彼女の元へと近づいているはずだが、
進めば進むほど、何か聖域を荒らしてしまっているように思えて。
ハンドルを握る手が妙に汗ばむ。
途中、商談も兼ねて小さな町へと立ち寄った。
チーズ大国でもある場所へと来たからには、手ぶらでは帰れない。
催事に取り扱う商品の下調べもあり、複雑な心境だ。
半日ほど仕事に費やし、漸く本来の目的へと。
カーナビにセットした場所に近づいたのか、案内が終了した。
けれど、建物らしきものは見当たらない。
カーナビの地図上には、かなり細い道が幾つも表示されている。
仕方なく、進める所まで進めて、そこからは歩いて探すことにしよう。
走行速度を落として、辺りをくまなく見回す。
すると、地図上に表示されている大きな湖へと辿り着いた。
日本の湖は山奥にあることが多いが、
ここは平坦に近い場所にあり、木々もそれほど生い茂ってない。
どちらかというと、湿原のようなかんじで、
吹き抜ける風が程よく木々を揺らしていた。
大型のSUV車をレンタルしたため、あまり細い道を進むのは危険だ。
見知らぬ車があれば、違和感を覚えるだろうし。
何より、サングラスをしても隠せない人種の違いがある。
俺は車を畔に止めて、歩いて探すことにした。
畔から数分離れた場所に一軒の白いコテージを見つけた。
辺りを見渡しても他に人家らしき建物は無いから、恐らくあの家だろう。
さて、どうしたものか。
何て言って訪ねて行けばいいんだ?
ここまで来て、そんなことすら思考が働かない自分が情けない。
暫く考えに考えた末、理由なんて何でもいい。
彼女の顔が見れたらそれでいいじゃないか。
その後のことは、それから考えるとすれば……。
漸く気持ちの整理がついた俺は、深呼吸して玄関へと向かった、その時。