オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
白いTシャツにハーフパンツ姿の彼女が家の中から出て来た。
咄嗟に声を掛けようとしたが、イヤホンをしているっぽい。
耳元を気にしながらストレッチを始めた。
その動きがとてもしなやかで、一瞬で視線を奪われてしまった。
いや、動きがしなやかだから見惚れたんじゃない。
俺の心が彼女をとらえて見惚れてしまって。
ハッと我に返った時には、彼女は俺がいる方向とは反対方向に颯爽と駆け出してしまった。
呼び止めようにも聞こえてないようだし、
元々アスリートだった彼女の足は相当速い。
幾ら毎日の日課でジョギングしているとはいえ、本気の彼女には到底追いつけない。
俺は暫し放心状態になった。
仕方なく車がある場所まで戻り、今後の事を考える。
俺は一体どうしたいのかと。
車の中で考えを巡らせていても彼女に逢えるわけじゃないし、
悩んだ末、辺りを散策することにした。
せっかく景色のいい場所に来たんだ。
日頃の疲れをリフレッシュするためにも、少しは羽を伸ばそうかと。
あわよくば、偶然にも彼女に逢えるかもしれないし。
そんな淡い期待を抱きながら、湖畔をゆっくりと歩く。
小一時間ほどした昼下がり、奇跡なんてやはり無いのか?と諦めかけた、その時。
神様は俺に味方してくれたようだ。
ランニングを終えた彼女が、畔にある桟橋の上でストレッチをしていた。
少し距離があることもあり、遠目で確認した程度だが、彼女だと分かる。
長い手足で軽々と逆立ちしてみたり。
俺が知る彼女がそこにはいた。
逸る気持ちでその場所へと向かうと。
「ん?」
目の前に飛び込んで来た状況が呑み込めず、唖然としてしまった。
俺と背格好が似ている男と仲良さそうにしながら、二人でストレッチしている。
さっき見た時はあんな男、いなかったぞ?
誰だ、あいつは。
どこのどいつだか知らないが、気安く触んじゃねぇ!
沸々と湧き上がる感情を押し殺し、近づくと。
かなり親しげに会話しているのを目の当たりにし、正気を取り戻した。