オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ

希和side



シャワーを浴び終えた私は、鏡の前で傷口をまじまじと見る。

退院して1ケ月が過ぎ、だいぶ傷口も癒えたように思える。

先生方のご尽力もあり、最小限の切開と最大限の処置を施して貰ったお陰だ。

真皮部分のみその下の脂肪層にかかる部分まで丁寧に縫合して貰い、

表皮はハリウッド女優も使用するという最先端医療用テープで処置して貰った。

出来るだけ傷痕を残さない為にも、限りある方法を試さないと。


シャワー浴で患部の清潔を保ち、出来るだけ治癒力を高めているが、

季節的に乾燥し始めていることもあり、患部に痒みを伴うこともある。

無意識に掻いてしまうことで炎症を引き起こし、

それによって色素沈着でも起こしたら、元も子もない。

清潔なタオルで軽く水気を取り、保湿用のクリームをたっぷりと塗布して。


更に癒着を引き起こさない為にも、軽めの運動を欠かさない。

前回は意識不明で歩くことすら出来ず、癒着する率も高まったのかもしれない。

体質もあると言うから恐怖心は拭えない。

手術が怖いわけじゃない。

痛みに耐えるのには慣れている。

ただ、これ以上傷が増えてしまったら、

本当にあの人の元へは帰れなくなる。

こんなにも傷だらけで、しかも男みたいな体格してるんだもん。

女性らしさは保っていたいから……。


出来るだけ力を入れずに腹部の回復を促さなければ。



傷口の手当てを終えると、念入りにストレッチを施す。

その後、しっかりと水分補給してからウォーキングに出掛けた。



澄み渡る空を見上げ深呼吸すると、少しひんやりとした風が頬を撫でた。

秋がすぐそこまで来ているようだ。

風に靡く髪を手を押さえ、無意識に笑みが零れる。


もう20年近くショートヘアーだった髪が、この1年でだいぶ伸びた。

初めは鬱陶しくてしかたなかったのに、今では愛おしさすらある。

次に逢う時までに、どれくらい伸びているだろう。

どんな顔をするかしら?

そんな事を考えるだけで倖せに浸れる自分がいた。


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