オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
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「エイミー、本当にありがとう!」
空港のロビーでエイミーと別れのハグ。
エイミーは目に涙を浮かべながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。
ぐっすり眠っているララを片手に抱いたディックが片手を上げ、軽くハイファイブする。
私より一回り小さいエイミー。
でもその存在は世界中の誰よりも頼もしくて、
心から感謝しても感謝しきれない。
エイミーに釣られて涙腺が緩んできてしまった。
人前で泣くことに慣れてない私は、
咄嗟にバッグの中に手を入れハンカチらしき物を取り出す。
それは、ここに来る途中、トランスファーでの乗り継ぎ空港で見知らぬ男性から頂いたもの。
とても滑らかで手触りの良い素材で編まれているため、
すっかりお気に入りと化した代物で、咄嗟にそれで顔を覆い隠すと。
「Ah!」
突如ディックが大声を上げた。
驚いた私はディックに視線を向けると、ディックは私の頭から足先まで見下ろして頷く。
その表情を見て分かった。
「Was this yours?(あたなのものでしたか?)」
納得するように尋ねると、彼は嬉しそうに頷いた。
そんな私たちのやり取りが分からず、唖然とするエイミーに彼が説明すると、
エイミーは『私達の間に見えぬ縁があるのよ』と誇らしく微笑んだ。
次に彼らと逢う時は、オランダ語で日常会話が出来るようになりたい。
二人に甘えて英語ばかり話してしまっていたから、次こそはね。
チェックインをするため、エイミーに別れの挨拶をすると。
エイミーは背伸びをして私の耳元にそっと呟いた。
『これから入籍しに役所へ行くわ』と。
その言葉に驚いてエイミーの顔を覗くと、彼女は恥ずかしそうに右手をそっと見せた。
そこには、エイミーの誕生石でもあるサファイアの指輪が。
きっと、正式にプロポーズされたのだろう。
新しい門出になる今日を選んでくれたことがとてつもなく嬉しくて。
一度は引っ込んだ涙が溢れて来た。
そんな私達のやり取りを見て恥ずかしいのか、
ディックはララを抱きながらフラフラ~ッと離れてしまった。
口数は少ないけれど、ちゃんと愛情を示してくれる彼。
本当にエイミーとお似合いで羨ましく思えた。