オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
2日間の活動を終え、母親らと共にフランス支社に向かおうと支度をしていると。
「京夜、パリに着いたら、みかちゃんとオペラ座に顔を出して貰える?」
「は?」
「そんな嫌そうな顔しないで」
「嫌なんだからしょうがないだろ」
「まったく……。彼女が出資してるバレエ団の公演があるらしくて、せっかくだから私も少し出資したら、是非にと招待されて」
「なら、母さんが行けばいいだろ」
「それが今夜、お父さんと別の会食が入ってて行けそうにないのよ」
「………」
「ね?………行ってくれるでしょ?一人じゃなくて、みかちゃんがいるし」
両親が会食で穴をあけれないというのであれば、
相手はそれなりの取引先のようなものだろう。
バレエ公演を観たくないという訳じゃない。
様々な世界観を体験するのも大事だと、幼い頃から沢山の事を経験しているし、
観劇やコンサートなどは脳内をリフレッシュ出来て意外と好きだが……。
新婚のみかと会えば、惚気が凄そうで嫌なだけ。
あいつのことだから、上から目線で説教しそうだしな。
それに、せっかくフランスに来たんだから、買い物に付き合えとか言って
俺の貴重な時間を無理やり浪費させそうだ。
断る言葉を探していると、母親は父親に俺が了承したと連絡を入れてしまった。
母親はしてやったりといった表情を浮かべながら、
忘れ物がないようにと、俺を無視してスタッフに指示を出す。
仕方がない。
のんびりドライブでもしようと思ったが、あいつに付きやってやるか。
*********
パリに到着した俺は、ルーヴル美術館前のカフェでみかと待ち合わせし合流した。
久々に見た彼女は少し落ち着いたように見える。
結婚したからか?
「何?………その眼」
「あ?」
「厭らしい」
「フッ、失礼な」
「ま、いいわ。行きましょ」
相変わらず強引でマイペースな奴だ。
だが、何故か憎めない。
身内だからか?
恐らく、俺に媚を売らないからだろうな。