オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
みかが手配した小型クルーザーに乗り込み、シャンパンで軽く乾杯。
人の目を気にせず、ゆっくりと出来るのは有難い。
話を聞くと、みかもそれなりに大変だという事が分かった。
伯爵の子孫にあたる男に嫁いだため、しきたりがかなりあるという。
文化的違いもあるため、日々苦労は絶えないという。
だが、こうして時々息抜きもさせて貰えるらしく、幸せだと。
惚気の連発かと思っていたから、その意外性に驚いていると。
「こっちでも話題になってるわよ?」
「………俺か?」
「うん」
「ゴシップだろ?」
「………そうなの?暫くツーショット写真が無いから、破局したのかと思たんだけど」
「してねぇよ」
「連絡は取り合ってるの?」
「………」
「どこで何をしてるのかは、当然知ってるんでしょ?」
「………あぁ」
歯切れの悪い返答になってしまう。
こういう時、咄嗟に芝居が出来ないのは俺が正直な人間なのだろうが、
それが、分かりやすいほどに痛々しい。
シャンパンを飲み干し、大きな溜息を吐く。
無理やり連れ戻すことは容易いし、
彼女が日本に戻りたくないというなら、俺が彼女の元で生活することも可能だ。
だが、俺がどうこうということじゃなくてl
彼女がどう思うか、どうしたいのかだと思うから……。
今も、これからも、俺からは『待つ』以外に出来ることはない。
寒々とした風が肌を撫でる。
アルコールで温まる体を冷やすかのように風に打たれていると。
「愛してるのね、…………あの彼女のこと」
「……………あぁ」
「フフッ、京夜らしくないけど、京夜らしい」
「意味わかんねぇぞ」
「恋愛感情を認めるのは京夜らしくないけど、現実を受け止めて潔く認めるって所は京夜らしいってこと」
「フゥ~ン」
「でも、私的には嬉しいかな」
「ん?」
「京夜が漸く『人の気持ち』が分かるようになったんだなぁと思って」
「馬鹿にするな」
「ホントのことじゃない。前の京夜って、いつも見下してて人としてダメ人間だったじゃない」
「………」