オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


みかが手配した小型クルーザーに乗り込み、シャンパンで軽く乾杯。

人の目を気にせず、ゆっくりと出来るのは有難い。

話を聞くと、みかもそれなりに大変だという事が分かった。


伯爵の子孫にあたる男に嫁いだため、しきたりがかなりあるという。

文化的違いもあるため、日々苦労は絶えないという。

だが、こうして時々息抜きもさせて貰えるらしく、幸せだと。


惚気の連発かと思っていたから、その意外性に驚いていると。


「こっちでも話題になってるわよ?」

「………俺か?」

「うん」

「ゴシップだろ?」

「………そうなの?暫くツーショット写真が無いから、破局したのかと思たんだけど」

「してねぇよ」

「連絡は取り合ってるの?」

「………」

「どこで何をしてるのかは、当然知ってるんでしょ?」

「………あぁ」


歯切れの悪い返答になってしまう。

こういう時、咄嗟に芝居が出来ないのは俺が正直な人間なのだろうが、

それが、分かりやすいほどに痛々しい。


シャンパンを飲み干し、大きな溜息を吐く。

無理やり連れ戻すことは容易いし、

彼女が日本に戻りたくないというなら、俺が彼女の元で生活することも可能だ。

だが、俺がどうこうということじゃなくてl

彼女がどう思うか、どうしたいのかだと思うから……。

今も、これからも、俺からは『待つ』以外に出来ることはない。


寒々とした風が肌を撫でる。

アルコールで温まる体を冷やすかのように風に打たれていると。


「愛してるのね、…………あの彼女のこと」

「……………あぁ」

「フフッ、京夜らしくないけど、京夜らしい」

「意味わかんねぇぞ」

「恋愛感情を認めるのは京夜らしくないけど、現実を受け止めて潔く認めるって所は京夜らしいってこと」

「フゥ~ン」

「でも、私的には嬉しいかな」

「ん?」

「京夜が漸く『人の気持ち』が分かるようになったんだなぁと思って」

「馬鹿にするな」

「ホントのことじゃない。前の京夜って、いつも見下してて人としてダメ人間だったじゃない」

「………」


< 436 / 456 >

この作品をシェア

pagetop