オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


みかに言われてハッとした。

確かにそうかもしれない。

相手がどう思おうが、気に留めたことは無かったしな。

彼女と生活するようになって、その辺りはだいぶ成長したってことか。


その後も俺のダメ出しとみかの愚痴やら世間話をしながらクルーズを楽しんで、

気付けば日付が変わろうとしていた。


「どこに泊まる予定だ?送るよ」

「大丈夫。迎えを待たせてるから」

「そうか」


みかが俺の分も手配したようで、岸に2台の車が待機していた。

みかが車に乗るのを見届けようと、腕組しフェンスに凭れ掛かっていると、


「京夜っ」

「お?」

「明日も付き合ってね!」

「はぁ?」

「私の休み、明日までなの。いいでしょ?ね?!」

「…………勝手にしろ」

「じゃあ、迎えに行くから」

「………あぁ」


挨拶代わりに投げキッスをしたみか。

ホント、憎めないやつ。

船上で意外な一面を垣間見れたこともあり、少し寛容になったのかもしれない。

まぁ、向こうも同じこと思ってるかもしれないが。


仕事漬けの日々から久々に人間らしい生き方が出来たような。

そんな時間を過ごせた気がした。


気心知れてるというのもあるかもしれない。

全く初対面の相手じゃ、到底無理だっただろうし。

たった数時間の間に、色々な自分に気付くことが出来た。






俺は数年前に伯爵の邸宅だった物件を購入し、渡仏する度にそこを拠点としている。

両親はパリの中心部にある高級アパートメントを購入したが、

俺は庭付きの美術館のような物件に惹かれた。

海外に来てまで都会の喧騒にのまれたくなくて。




自宅に向かう車内。

俺は目を閉じ、心を無にした。


すると、一番先に浮かんだのは、…………やはり彼女だった。


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