オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


彼女の瞳からは、相手への想いの深さが感じられた。


俺と同じように、どうする事も出来なくて

ジレンマに陥っている……そんな感情が。



そんな彼女に同情してなのか、何なのか、

ハッキリとは分からないが、手を差し伸べたくなってしまった。


自分と似ている境遇と、そして、相手を想うその心の深さに。



「お願いとは………何ですか?」


俺の言葉に一瞬視線を泳がせた彼女だが、

また直ぐに俺をじっと見据えた。


「私と…………婚約して下さい」

「へっ?!」


彼女の言葉に頭の中が真っ白になった。

今、………婚約って言わなかったか?



唖然としている俺に彼女はこう続けた。


「勿論、婚約だけです!結婚はしません。あくまでも結婚するフリをして貰いたいのですが……」

「…………婚約………ですか…………」


俺はそれ以上、言葉が続かなかった。


だって、婚約するって事は、希和を蔑ろにするって事だ。

俺にはそんな事、出来る筈が無い。


今こうして、彼女以外の女性と2人きりでいる事さえ後ろめたいのに。


断ると決めて来たのに、何故か彼女を突き放す言葉が出て来ない。

恐らく、彼女が言った『フリ』という言葉に流されてだと思うが。


脳内で必死に打開策を探していると、


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