オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「貴女の想い人は、どんな方ですか?貴女に力を貸すのであれば、知る権利がありますよね?」
「…………はい」
彼女はゆっくりと顔を持ち上げ、俯き加減で話し始めた。
「彼は、5年程前から父の秘書をしております。誠実で仕事熱心ですし、父の信頼も厚いです。私の一目惚れで………初恋の人です」
「初恋………ですか」
「はい。大学へ入学し、少しずつ彼と話すようになり、暇をみつけてはデートを重ね……。今年の春、大学卒業を機に想いを伝えました」
「…………お相手の方は………何と?」
「『社長が許す筈がありません』と、断られました」
「それでも、貴女は諦められなかった……という事ですか」
「…………はい」
彼女の声がポトリと畳に落ちる。
遣る瀬無い想いがひしひしと伝わって来た。
ほんの少し前の自分と重なっているように見えて、胸が痛む。
「こういう言い方は失礼だと思いますが、その彼の気持ちは……?」
「どうでしょう……?私はてっきり両想いなのだからと疑いもしませんでしたが、『結婚となると話は別だ』と言われました」
「…………そうですか。まぁ、当然でしょうね。貴女の立場を考えての決断だと思います」
彼女はギュッと手を握りしめ、
堪え切れなくなったのか、涙を零した。
「彼が言ったんです。『甲斐性が無くてすまない』って……」