オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
ジャケットを脱ぎ、ソファに腰を下ろすと
香ばしい香りを纏う珈琲が目の前に置かれた。
いつものように右斜め横に腰を下ろそうとする彼女の腕を掴んで
俺は彼女を隣りに座らせた。
「大事な話がある」
「…………はい」
俯き加減の彼女。
視線をテーブルの上に置かれたカップに固定し、
俺の言葉をじっと待っている。
そんな彼女の手を握りしめた。
「希和」
「………はい」
「2ヶ月だけ、我慢してくれるか?」
「へ?」
俺の言葉が予想していたものと違ったのか、
パッと顔をあげ、視線が絡まった。
「希和も知ってると思うが、俺には縁談の話があった」
「………はい」
「天宮製薬の1人娘で名前は凪彩(なぎさ)という」
「……はい」
「今年の春に大学を卒業したばかりの22歳だ」
「…はい」
「その彼女には、好きな男がいるんだ」
「え?」
「彼は彼女の父親の秘書をしているそうで、お互いに想い合っている仲だそうだ」
「………」
「だが、家柄や立場を考え、彼は身を引く決意を固めたらしい」
「……はい」
「何だか、俺らに似てないか?」
「え?」