オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「ご婚約、なさるのですね……?」
彼女の震え気味の声が耳に届く。
それは紛れもなく、俺が彼女に言わせた一言だ。
「…………ごめんな」
ボソッと呟いた俺の言葉に反応するように
俺のYシャツをギュッと掴む彼女。
きっと、悔しいに違いない。
俺が逆の立場なら、暴れ狂う所だ。
そんな彼女をきつく抱きしめ、
安心させようと優しく頭を撫でる。
「形だけ。……年末までという条件を出した。勿論、その前に上手くいく事を願ってるが……やっぱり、嫌か?」
「…………」
彼女からの返答はない。
返す言葉が見つからないのかもしれない。
それに、『嫌か?』と尋ねられても
現実的には事後報告なのだからタチが悪い。
二度と彼女を悲しませまいと誓った筈なのに
こうしていとも簡単にそれを破ってしまった。
本当に自分が情けなくてどうしようもない。
「………すまない」
心から漏れ出す謝罪の言葉。
決して、希和を裏切った想いで口にした訳ではないのに
胸が締め付けられるように痛む。
俺の腕の中でゆっくりと顔を持ち上げた彼女は
目に溢れんばかりの涙を溜め、俺を捉えた。
そして――――。