オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「あの、もしかして、不味かったですか?」
「……いや、旨いよ」
俺は無意識に顔を背けた。
マジで恥ずかしい。
たった数口で涙ぐむとは……。
そんな俺から視線を逸らし、彼女は黙々と食べ始めた。
心なしか、彼女の瞳も潤んでいるように見えた。
かなり遅めの夕食を摂り終った俺らは、
彼女の指示の下、部屋を片付け始めた。
ふと、彼女に視線を向けると
彼女の表情は実に生き生きとしている。
そして、俺もまた、
さっきから頬が緩みっぱなしだ。
リビングテーブルの上の書類を整理し終えると、
「お疲れ様でした」
「………サンキュ」
ソファに腰掛ける俺にハーブティーを差し出す彼女。
相変わらず、タイミングが抜群だ。
そして、彼女はいつもの定位置に腰を下ろした。
――――俺の斜め右側に。
何てこと無い、見慣れた仕草。
俺はソファに腰掛け、彼女はラグの上に直に座る。
距離にして1mちょっと。
けれど、今は……この距離がもどかしい。
まるで、俺と彼女の心の距離を表しているみたいで。