オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「お待たせ致しました」
彼女が珈琲をリビングテーブルに静かに置くと。
ブブブッと、テーブルの上に置いてある俺の携帯が震えた。
株の動きを知らせるメールかと思い、
俺はカップを手を伸ばすと―――――。
いつのも定位置に座ろうとした彼女が中腰状態で硬直した。
俺は嫌な予感がして、彼女の視線の先を辿ると……。
数秒前に震えた俺の携帯がそこにある。
そんな俺の視線に気づいた彼女は
何事も無かったように腰を下ろして、カップを手にした。
そして、フゥ~っと珈琲に息を吹きかけているが、
明らかに瞳が潤んで見えた。
俺は咄嗟に携帯に手を伸ばし確認すると、
『受信メール1件』と表示されていた。
すぐさまそのメールを開くと、
メール送信者は『天宮凪彩』と表示されている。
もしかして………。
いや、もしかしなくても、見てしまったのだろう。
彼女は動体視力が物凄くいい。
幼い頃から武術をしてきたお陰で、
嫌でも動くものを捉える癖があるようだ。
恐らく、ディスプレイに表示された名前を
見逃さず見てしまったに違いない。
明らかにテンションが下がり、今にも涙が零れて来そうだ。