オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
『天宮凪彩』
一瞬にして、幸せな時間が終わりを告げているのだと悟った。
忘れていた訳じゃない。
この先、彼は私以外の人と婚約するのだという事を。
けれど、心のどこかで夢であって欲しいと願っていた。
彼の悪いジョークなのだと。
けれど、自分の目で見てしまっては
もうこれが現実なのだと覚悟を決めねばならないと思った。
携帯に手を伸ばした彼は、私の目の前でそれを確認した。
心臓がギュッと抓まれる。
声の無い叫びが身体中に巡らされた、その時。
彼から、話し合いに同席して欲しいと告げられた。
正直、物凄く複雑な心境だ。
フリだと分かっていても、彼の隣りに立つ女性を
快く受け入れられる自信がない。
必死に顔に笑顔を貼り付けたとしても
心ではドス黒い感情に支配され、
あらぬ言葉を吐いてしまうのではないかと……。
彼の申し出に躊躇していると、
彼は遠まわしに私が必要だと言ってくれた。
解っている。
彼が気を遣って言ってくれたって事も。
だから私は、心にカーテンを引き、彼の傍から離れないと決めた。
例え、理不尽な話し合いであったとしても……。