オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
彼女が私達の目の前に出して来た書類は
天宮製薬が来春に発売するという新商品の概要が記された書類。
しかも、その商品を御影百貨店が先行的に独占販売するという。
隣りにいる彼に視線を向けると、苦笑し小さく頷いた。
彼女の話によると、京夜様のお義父様が進めている案件らしく
彼と直接話すのは今日が初めてだという。
そして、その商品の広告塔に彼女が立ち、
御影百貨店内において、大々的に販売するという。
京夜様のテリトリーに彼女が立つ。
それは、彼女を京夜様が支えるという暗黙の了解とも思える構図だ。
世界的に名高い『御影』と日本屈指の製薬会社『天宮』
この両家が手を携えたら、
必然的に飛び交うであろう『婚約』の二文字。
頭では理解している。
これは戦略であり、ビジネスだという事が。
だけど、私の胸の奥は
耳を塞ぎたくなるほど警告音が鳴り響いている。
そんな不安に今にも押し潰されそうになった私は
自ら、商品の概要が記されているファイルを手にして視線を誤魔化す。
「魅力的な商品ですね」
心に幾重にも鍵を掛けて―――――。