オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
何故かは分からない。
誰が言い出したのか、それすら分からないけれど
私は少し前まで彼の護衛をしていた『松波秘書』の
瓜二つの妹という事になっているらしい。
元々、下の名前は敢えて公表していなかった為、
逆にそれが謎めいていて人気だったのかもしれない。
今まで私に対して瞳にハートを浮かべていた彼女達は、
今では嫉妬とも思える鋭い視線を浴びせて来る。
秘書の私が『女』だという事が気に入らないらしい。
けれど、そんな彼女達の嫉妬心は私にとっては嬉しくて仕方ない。
だって、彼女達の目には私は『女』に見えているという事だから。
ずっとずっとコンプレックスだった。
『男』に間違われる事が……。
彼の隣りに立つためには、より女性らしくならないと……。
今日のスケジュールを再確認し、彼に珈琲をお出しする。
京夜様は既に昨日提出された稟議書に目を通し始めていた。
「本日は、10時半から初売り用福袋商品の最終確認会議、14時からセルファグラフィック様との打ち合わせ、16時から販促会議の予定となっております」
「ん」
彼は手元の稟議書にサインし、それを私に差し出した。
私はそれを受取り、一礼して部屋を後にする。