未来を変える殺し屋
肩を叩かれ、千鶴は小さな悲鳴を上げて振り向いた。


ストーカーと千鶴が対峙した。


ストーカーが大きな口を横幅いっぱいに広げ、笑う。


その様子は、獲物を前にした獣に似ていた。


いや、実際、獲物を前にした獣だったのかもしれない。


「こんな時間に何してるんだい?」


ストーカーの妙に甲高い声がトンネル内に響いた。


三十代後半に見えるが、声は若々しい。


「なにって……家に帰るだけです」


声は怯えているようで少し震えているが、逃げ出すわけではない。


背中を向けているので表情は見えないが、意外と勇気があるなと思う。


「嘘はよくないなぁ」


「え?」


「いつもはこの道を通らないじゃないか」


「なんで……」


千鶴が一歩、二歩と後退りした。
< 15 / 27 >

この作品をシェア

pagetop