\胸きゅん注意報/
ショートケーキ
「今日も相変わらず気合が入ってるな」
静かなオフィスの給湯室で、香り漂うコーヒーを愛用のマグに注いでいた私の背後で。
腐れ縁で同期の佐伯隼人が挨拶もなく姿を現した。
「なによ。文句でもあるわけ?」
「いや、別に」
人を小ばかにした口調の同期を一瞥すると、
「毎回毎回ほんとよくやるよな」
呆れた表情を浮かべてうんうんと一人頷いていた。
「女をとっかえひっかえするアンタには言われたくないわ」
「お前もさほど変わらねえだろ」
と、お互いに悪態を吐いたところで。
佐伯のマグを手に取ると、そこにコーヒーを注いでやった。
「はい」
「サンキュ」
小さくお礼を言った佐伯が私の手からマグを奪っていく。
ほんとにコイツは…。
「なあ」
「なに?」
「それ、どのくらいかかるんだ?」
佐伯があごを軽く突き出すようにして上げた先には、今日の合コンのために昨夜頑張った私の指先だった。
< 1 / 5 >