君の絵を描かせてくれ。






「そっか………。」






「お前が産まれた時のことはよく覚えてる………」




それから、昔の話をしてくれた。




「あん時はもう俺は11歳だった。
家族3人でお前が産まれてくるのを楽しみにしてた。
けどな、経営してた工場が潰れて状況は180度変わった。借金背負って、3人生活するのも苦しくなった。
そんな時にお前が産まれた。嬉しかった。
すごく嬉しかったけど、ミルクやおむつを買ってやるお金もない。駆け落ち同然で結婚した両親は、助けてくれる人もいなかった。
どうしようもなかった。お前を手離すという選択肢しかなかったんだ。」





『……………うぅっ。』





「お前の名前はな、もしどこかで会ったときに絶対にわかるように少し変わった名前付けようってことになって。
親父の真一、俺の真幸から〝真〟
お袋の莉華から〝莉〟
苗字の羽田から〝羽〟
その3つを合わせたんだ。
これなら被んないだろうって。」






私の名前にはそんな意味があったんだ。





「両親は本当に最後までお前を気にしてたし、ずっと幸せを願ってた。」





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