俺様魔王の甘い口づけ
そして、城につくと私の訪問は聞かされていたのだろうすんなり中に通され、王と接見を行う広間まで連れてこられた。
赤いじゅうたんがまっすぐに伸びその先に数段の段差にその上にある立派な椅子。
その椅子はきっと王様が座るんだろう。
私は立ったまま王様を待つ。
しばらくして、少しざわめきが聞こえるとたくさんの従者を引き連れてその王様とやらが姿を現せた。
年配の、それでいておじいちゃんというよりは若々しい風貌で、強い意志をその瞳に纏った王様。
豪勢な赤いマントを身に纏い、目の前にたたずむその人に、息をのんだ。
ルイとは違う、威厳を放つその姿。
権力、富、名誉、すべてを手にしているであろう余裕が感じられる。
「そなたが、魔王に捕らわれていたという人間の娘か?」
「え…、あ、芽衣子と言います。はじめまして」
私の頭からつま先までじとっと視線を這わせる。
その視線に少しだけ感じる嫌悪感。
私は、できるだけ丁寧にお辞儀をする。
礼儀正しく丁寧に、なんてしたこともないから失礼にあたらないように必死だ。
「ほお、どのような力を使ったのだ?」
「え?…力なんて…。特に…」
「なにもせずとも、あの魔王がそなたの命をこの世に留めて置いたというのか?」
「というか…、非常食だと言ってましたから、そのうち同じように血を吸い取られていたと思いますけど…」
それは事実だ。
私は現に血だって一度吸われてる。
非常食だと何度も言われてきたし。
きっと、その言葉通りいずれはと思っていたに違いない。