俺様魔王の甘い口づけ
「あの時、すんなりと芽衣子さまが勇者に連れ去られたのは、ルイさまの仕業だったのでございますよ」
「え、そんな…」
「私も信じがたかったのですが…。ルイさまほどのお方が侵入者に気づかないはずがないのです。ましてや芽衣子さまの部屋を見つけられるはずが…」
それは、レオも言っていた。
足が自然とそこに向かっていたと。
でも、まさかそれがルイの仕業だなんて。
「芽衣子さまを人間界へ帰そうと思われたのでしょう。身寄りはないにせよ、魔界にいるよりも自分と同じ人間の住む世界にいたほうが心も休まるだろうと」
「ウソ、ルイがそんなこと…」
「ルイさまはお気づきになられたのです。他の人間とは違う芽衣子さまの人となりに」
「違う…?」
「芽衣子さまは、ルイさまをわかろうとしてくださる。ただ怯えて、拒絶する人間とは違うのだと…。ですから、芽衣子さまの幸せをルイさまなりに考えたのでしょう」
そんなことを言われても、全く信じられない。
あのルイが、そんなことを。
私の幸せを願う?
なんだろう、胸がうるさい。
顔が、熱い。
「変わろうと、されているのですよ」
「…ウソ…」
ハンスがほほ笑む。
私は、駆け出すようにルイが消えたほうへ向かった。