俺様魔王の甘い口づけ
とはいえ、そうそう簡単に日常が変わるわけでもなく。
血を吸うのはやめてと迫る私と、それを蹴散らすルイ。
そう簡単にそれをやめることはできないらしい。
「なんでよー」
「血を吸うなという願いだけは…、いくら芽衣子さまの願いでも無理なのですよ」
ハンスが言う。
「どうして?」
「それは…」
決まって、その問いには言いよどむのだ。
それはなぜなのか、私にはわからない。
ルイに口止めされているのか、それ程の理由があるからなのか。
はたまた、理由はないことを隠しているのか。
「ですが、本当にすごいことなのですよ。ルイさまがあのルイさまが!」
そして決まってハンスはそう続けるのだ。
確かに、その回数が減っただけでも進歩なんだろう。
それ以上を求める私は強欲すぎるのか。
「芽衣子さま」
「…ごめん。ハンスのせいじゃないのにね」
ハンスは私の気持ちに寄り添おうとしてくれてる。
私の気持ちをあげようと、そうやって報告してくれてることも。
でも、やめさせたくて私は戻ってきたの。
やっぱり私は、簡単に人が殺されてしまう現状を、傷ついてしまう人がいる現状をなくしたい。