俺様魔王の甘い口づけ


城の裏手にある大きな木。
そこには、子リスが棲みついていた。

それに気づいたのはここに戻ってきた日。



それから少し気分が落ち込むと私はここに来て子リスが軽やかに木を駆け上がる様を眺める。
気持ちが少しだけ、軽くなる気がするから。




「いいね、君たちは楽しそうで」





思い悩むことなく、木をかけ木の実を食べる。





「しかし、寒さも雨も防ぐことはできん」




ふと、振ってきた声。
振ってきた、と思ったのはその木の上から声が聞こえて来たから。
その声の方へ見上げると、ルイが木の枝に足を延ばし座っていたから。


いつからそこにいたんだろう。
さっきまでは、絶対にいなかったはず。

ルイの姿があれば気づくはずなのに。




「いつからそこにいたの」

「…さあな」




また、私の知らない魔法を使ったんだろうか。
でも、聞いてもルイはそれは魔法とかではないという。
私にとっては、魔法のようなものだ。


手に触れていないのに扉を閉めたり、シャンデリアを落としたり。




< 123 / 425 >

この作品をシェア

pagetop