俺様魔王の甘い口づけ
「また、泣いていたのか」
「え…?泣いてなんか、ないよ」
私は頬に触れる。
濡れてなんかない。
「お前は、いつも泣いてばかりいる」
「そんなこと…」
ルイは空を見上げながら呟く。
表情はよく見えないけど、その声には切なさが宿っていた。
どうしてそんな声で…。
「ハンスには、よく笑っているのに」
いつの間にか呼ぶようになっていた名前。
だけど、どうしてかそんな事よりもルイの態度が気になった。
寂しそうに見えるんだ。
寂しさなんて知らないと言っていたはずのルイの姿が、とてもさみしく映る。
「寂しいの?」
「…この気持ちを、寂しいと呼ぶのか?」
ルイの視線がこちらに落ちてくる。
瞳が、揺れている。
いつも、自信に満ちて冷酷に冷めた瞳だったはず。
その瞳が揺れることなんて、ないと…。
私は、そっと手を伸ばした。