俺様魔王の甘い口づけ
ハンスは、快く散歩を引き受けてくれた。
私は身支度をして城の入り口まで降りた。
そこには、いつもの執事の滑降ではない少しだけラフな格好のハンスの姿。
「わ、ハンスの私服?」
「まぁ、そうですね」
「いつも執事みたいなぴっちりした格好だからなんか新鮮」
「そうでしょうか?あまり着る機会もないので私自身も少し着心地が悪い気がします」
「え?でも、素敵だよ!そっちのハンスもいいと思う!」
堅苦しさが抜けて、とてもいい。
いつものハンスは、なんだかこっちもきっちりしなくちゃと変に肩に力が入っちゃうから。
「では、まいりましょうか」
「うん!」
このきっちりした口調もどうにかなればいうことないんだけどなあ。
無理なことを言うのはやめよう。
散歩と言っても、森は危ないということで本当に城の周りだけ。
乾いた大地、とはいえところどころに木の生えた果てしなく先まで見渡せる大地。
ルイは、先には他の悪魔たちが住む城があると言っていた。
見えないけどこの先にあるんだろうか。
薄暗い空は、少し不気味でそこだけは慣れることはなかった。
寂しげにそびえ立つ城が少し切なく見えた。
この広い大地に、ぽつんと立つ城。
なんだか、一人ぼっちのルイを表しているようで…。