俺様魔王の甘い口づけ



「せっかくだから、しばらく置いてもらおうかな。ルイの事も気になるし」

「ルイのこと?」

「噂になってるよ。冷酷非道の魔王さまに心が芽生えたって」



わ、そうなんだ…。
それってどうなんだろう。



「悪いこと言われたりしてる?」

「まあ、そう言う人もいるよね。魔王の威厳はどうした、とか、言いたい放題。でも、認めてる人も多いよ」

「そうなんだ」

「今までのような力で抑えつける政治をよしとしない悪魔も多かったからね」





それはそうだろう。
力で抑えられることに嬉しいと感じる人の方が少ないはず。
魔王の威厳と言われたら私にはよくわからないけど。




「キイは、どう思うの?」

「おれは、別にルイが前の魔王さまの後を続く必要はないと思うよ。ルイの想う魔王になれば」




その言葉に、私は深く頷いた。
“魔王は冷酷であれ”そんな掟なんて関係ないんだ。
ルイが想う魔王になればいい。





「前の王は魔王の定めとか魔王の血にひたすら従っていたお方だったからね。冷酷なまでに冷酷で、非道なまでに非道であり続けた。それも間違ってはいないんだ。それだって、あのお方が思い描く魔王像だったんだから」

「そうだね…」




それがいくら残酷で、許されざることだとしても。





< 167 / 425 >

この作品をシェア

pagetop